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船頭だより
保津川の四季

船士詩 ~79~ 梅雨の閼伽(あか)

 

丹波路に 嘆きの恵み 梅雨の閼伽

 

たんばじに なげきのめぐみ つゆのあか

 

 

昼から、大雨・・・。

空梅雨だった丹波の地に天からの恵みが降り注いでいます。

これで、田畑に水が満たされ、保津峡の草木もうれしがっていることでしょう。

夏の渇水を憂いでいた農家の方々にとっても恵みの雨となりました。

 

保津川下りも、台風の影響か、朝から強風が吹き、終日運行中止となりました。

私たちにとっては、嘆きの雨なのか、恵みの雨なのか・・・。

 

 

発船場にお舟さんの姿はなく、ひっそりと係留場に佇んでいます。

これまで休みなく共に働いてくれたお舟さんたち。しばしの休息ですね。

 

 

昼からの大雨で、舟に溜まった水を掻き出す作業が行われました。

 

 

昼から夕方の間にこれだけの雨が舟に溜まっていました。

これを人力で掻き出します。

この作業は、舟が沈まないようにするためと、河川が増水した場合、舟を陸にあげるのに水が溜まっていると支障がでるためです。

 

 

排水ポンプなどを使って、掻き出すこともありますが、いかんせん、人力の方が早いんですよ。

しかし、この作業は足腰に効きます(笑)

 

この作業は、船士用語で『アカカイ』と呼ばれています。

聞きなれない言葉ですよね。

私も、船士になったとき不思議に思いました。

 

それで、ちょっと調べてみましたが、「あか」という言葉は、仏教用語の「閼伽(あか)」という言葉ではないかと思います。

※閼伽(あか)・・・貴賓または仏前に供えるもの。特に水をいう。または、それを入れる容器。(広辞苑第六版)

 

ありがたい水なんですね。

 

『アカカイ』=『閼伽掻い』

 

アカカイは、しんどい作業です。

アカカイをするということは、河川の増水が予想され、河川の氾濫、そして運行中止へとつながります。

 

そうです。嘆きの雨、嘆きの水なのです。

 

そんな嘆きの雨(水)を恵みの雨(水)とする発想がここにはあるような気がします。

 

長い年月を自然とともに暮らす先人たちの自然に対する想いが表現されています。

 

そんな想いを胸に、ありがたくお舟さんから『閼伽』を掻き出します・・・。

 

 

そう思えば、しんどい作業もありがたく思えてきますね。きっと・・・(笑)

 

 

船士魂

 

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