船士詩 ~75~ 花いばら
保津峡や 明治が薫る 花いばら
ほづきょうや めいじがかおる はないばら
今、保津峡では、蛇結茨(ジャケツイバラ)の黄色い花と野茨(野薔薇)の白い花が咲いています。
蛇結茨は、保津峡の上流部に、野茨は下流部によく咲いています。
ここで、野茨の話をひとつ。
野茨は、現在の嵯峨野観光鉄道・トロッコ列車が通る線路付近から垂れ下がるようによく咲いています。
以前、古参の船頭さんから、野茨は「京都鉄道」※が開通した時に記念で植えられたものというお話を伺いました。
※1899(明治32)年、京都鉄道の嵯峨-園部間が開通した。そのうち、嵯峨-亀岡間の路線をトロッコ列車が今でも利用している。
野茨と言えば、沖縄を除く全国各地でみられるもので、山野に自生し、特に河川敷などかく乱が多いところに多く自生するようです。
ですので、京都鉄道開通時に野茨が植えられたことの真偽は定かではありませんが、そんなお話が長年船頭たちによって伝えられてきたとすると、あながち眉唾ものの話でもないような気がします。
毎年、野茨の花が咲くと、そんな話を思い出し、保津峡の風にのって、野茨の匂いとともに、明治の薫りが漂ってきます。