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船頭だより
保津川の四季

船士詩 ~74~ 三船祭

翠嵐に 心技を捧げる 船士かな

すいらんに しんぎをささげる せんしかな

 

昨日、5月19日(日)、渡月橋の上流・大堰川(保津川)で、「三船祭(みふねまつり)」が行われました。

 

三船祭は、車折神社の例祭(5月14日)の延長神事として、昭和の御大典を記念して、昭和3年から始められた祭りです。

また、大堰川での舟遊びは、898年に、宇多上皇の嵐山への御幸の頃に始まったといわれています。その後も、詩歌、管弦などに興じた舟遊びが行われたことに因んで、毎年5月の第3日曜日に、御座船・竜頭船・鷁首船など20数隻が、平安時代の優雅な舟遊びを再現します。

 

今年は、三船祭の舟を供する「嵐山通船」さんより、保津川下りの船士への応援要請があり、9名の船士が奉納船を操ることとなりました。

私も例年、保津川の舟から眺めているだけだったので、祭りに参加させていただき、久しぶりに緊張と興奮を味わいました(笑)

 

この日は、生憎の空模様・・・

いつ雨が降り出すか・・・厚い雲に包まれた嵐山・渡月橋。

 

打ち合わせをいている間にも船頭仲間が下っていきます。みな、手を振って激励してくれます。

素晴らしい仲間たちです。

 

奉納船が出番を待っています。

 

御座船(ござふね)・・・車折神社のご神霊(神様)が坐する舟

神事では、各奉納船が、この舟の前に止まり、各芸能をご神霊に奉納します。

 

竜頭船(りゅうとうせん)と鷁首船(げきしゅせん)・・・「竜頭鷁首」に因んだ舟。

竜頭鷁首(りゅうとうげきす)・・・平安時代、貴人の乗った船。二隻一対で、一隻は舳(へ)に竜の頭、他の一隻は鷁の首の形を彫刻したもの。伶人を乗せ、池泉に浮かべて管弦を奏した。竜はよく水をわたり、鷁はよく飛んで風に堪えるというので、水難を防ぐ意に基づくという。(広辞苑第五版)

※鷁(げき)とは、鵜に似た白い羽をもった想像上の鳥。また伶人とは管弦を奏する人たちのこと。

 

この極彩色の舟が、翠緑の嵐山に映えて実に美しい!!

 

私が担当することとなった第八號「糸竹」、お琴を演奏される方々がご乗船されました。

 

さて、いよいよ神事開始という時に、雨が降り出しました・・・

渡月橋上流の一ノ井堰にて待機です。

20数隻の奉納船が整然と並び、順番に御座船の芸能を奉納していきます。

↑ 写真左に見えるのが、御座船と竜頭鷁首です。

竜頭船と鷁首船は、御座船を守るように、御座船を挟むように相対します。

 

その後、各奉納船が、各芸能を奉納し、舟遊びへと続きます。

 

ここから、観覧者にとってメインイベント?!となる奉納行事が行われます。

そう「扇流し」です!!

扇流船(おおぎながしふね)より芸能の上達を祈願して奉納された扇が大堰川に流されます。

この奉納行事は、かつて足利将軍が天龍寺へ参詣した際、お供の童子が扇をあやまって川に落としたところ、扇が川面を流れる優美な様に、その将軍が大変喜ばれたことから、天龍寺参詣の時、お供の人々が競って扇を川に流したという故事にちなんでいます。

この扇を拾うと、ご利益があるというわけではないそうですが、観覧船に乗った人々は、争うように扇を取り合います(笑)

しかし、私には、この扇に、芸能上達への想いが詰まっており、ご利益があるように感じられます。

私も拾って、観覧船の方々や川岸の観覧者の方々に差し上げましたが、結構人気があって、川にはまってしまう方もおられました・・・。

 

実は、私も一つ失敬してきました(笑)

 

例年、なにげなく眺めていた祭りでしたが、今回参加させていただき、大変勉強になりました。

この保津川下りの仕事も、船を安全に操る技術とお客様を楽しませる技能が必要な仕事です。

ある意味、一つの伝統芸能といえるでしょう。

さらに、「竜頭鷁首」に象徴されるように、水難防止の意味もあるでしょう。

この祭において、芸能を奉納をする方々とともに、私たち船頭も自分たちの「心技体」を奉納しているような気がしていました。

 

雨露に濡れた、翠緑色の鮮やかな嵐山、そして大堰川(保津川)に色とりどりの船が浮かび、色とりどりの装飾を来た人々が舟遊びに興じる。

嵐山は、本当に優美な世界に包まれていました。

 

船士魂

 

 

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